フランツ・カフカ、『アメリカ(失踪者)』、角川文庫

ドイツ人の少年カール・ロスマンが、アメリカへ到着し、叔父のもとへと引き取られるも追放される。道中フランス人ドラマルシュ、アイルランド人ロビンソンという二人の男と出会うが、彼らに愛想を着かし別れてしまう。その後ロスマンはホテルのエレベーターボーイとなるも、ロビンソンの引き起こした騒動のせいでそのホテルから首を言い渡される。ドラマルシュ、ロビンソン、彼らの女主人ブルネルダの所に転がり込んだロスマンは、彼らの召使いになるのを拒否し、逃亡を企てる。欠落部を挟んで舞台は有名な「オクラホマの野外劇場」へ。サーカスにリクルートされ、オクラホマへ旅立つ電車の中で物語は終わる。

 

比較的プロットは練られ、精彩に富み、読みやすい。

初期の作品だが、執筆時期が「判決」と重なるだけあり、いわゆるカフカ的な面白さは味わえる作品であるように思う。論理の脱臼(夢の論理、或いは子どもの論理[バタイユ]?いずれにしろ、ごく主観的な領域が問題になる)、グロテスクに誇張された身振り(ベンヤミン)等々。しかしやはり『審判』や『城』に比べ雑味があるとも言えると思う。

最後の「オクラホマの野外劇場」のシーンはおそらく、救済がテーマになっているのだろう。長編3作はいずれも救済というパースペクティヴで読むことが可能か。ブランショの「死の彷徨」概念とも通じるかもしれない。

 

アメリカ (角川文庫)

アメリカ (角川文庫)